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アイパートナー

愚直な社長の参謀

 

志誌ジャパニストに連載された「愚直経営のススメ」をご紹介いたします。

全8回ございます。ぜひ、ご覧ください。

 

愚直経営のススメ 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回

第4回 日本ブランドの経営

黄金の奴隷となるなかれ

『海賊と呼ばれた男』(百田尚樹)の主人公、出光興産の創業者・店主の出光佐三氏は日本人の誇りであり、その経営哲学はこれからの経営の大きな指針になると考えます。彼は『働く人の資本主義』などの著書で、我々に有益な示唆を与えてくれています。
 まず、「黄金の奴隷となる勿れ」と説きました。お金は人間生活に必要不可欠で大事なものだが、人がお金に支配され使われてはならない。あくまでお金は人間が上手く活用すべきものであると。そして、「出光は石油配給という些事をやっているのではない。人間の真に働く姿を国家社会に顕現して示唆を与うるものである」という高い志を掲げました。
「資本は人、金は資金」。資本金があって企業があるのではなく、人間が根本にあって企業がなりたっている。つまり、企業は投資家のものではなく、働く人のものであると言い切っています。質素を旨とし、お客様に還元、人材育成と将来への備えと投資にお金を回しました。
 さらに「能率の根本は、自発的に自由に働く人の和の力である。人間の尊厳をもった人が互いに仲良くしながら互いのために働く」と。社員を信頼し、自由と権限を与え、創造性の発揮を奨励しました。加えて「昼間楽しく働いて公生活を楽しみ、家に帰って私生活を楽しむ」と理想の生き方をも示しました。

 

「匠」・プロフェッショナル集団

 経営で大事な戦略の要諦は競争優位性ですが、出光佐三氏の説く、人を軸に戦略論を考えてみるとどうなるのでしょうか。
 論語の中にこんな一節があります。「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」。つまり、知識の量は問題ではなく、なにごとも好きで楽しむことが勝つ秘訣であるというのです。競争優位の源泉は人。好きで楽しいことに集中し突き抜けること。
 好きで楽しいことに没頭することは、幸せの大きな要素でもあります。評価がどうとか関係なく、やっていること自体が幸福。一人ひとりが自分の持ち味を発揮し、専門性を極め、その道のプロフェッショナルになる。素人には見えないところも見通せる鑑識眼を身につける。
 さらに、誠実な人間性も武器と考え、周りの人との深い信頼関係を築いていく。社会への貢献に自分の価値を見出し、自信と誇りをもつ。
 これは日本が世界に誇る「匠」の働き方であり、生き方ではないでしょうか。会社は機械部品の集まりではなく、多様なプロフェッショナルの集合体であり、互いに尊敬し合える仲間であるべきなのです。

 

島国根性の功罪

 ある会社の経営会議に出席した時のことです。アメリカ子会社のアメリカ人ゼネラルマネジャーが日本本社のことについて意見を求められ、「日本はIsland Mentaliy(≒島国根性)が強い」と言ったことを鮮明に覚えています。アメリカからヨーロッパ、アラブ世界まで股にかけて営業していた彼からすれば、日本のスタッフは視野が狭く、閉鎖性が強いと感じていたのでしょう。
 今の時代、グローバルな活動は当たり前であり、世界に向けてオープンで異質なものを受容するダイバシティー(多様性)が問われています。
 しかし、本当に日本は異文化を受入れない受容性の乏しい国なのでしょうか。私はむしろ、日本人は本質的にダイバシティーに優れた民族ではないかと思います。日本は多神教の国であり、昔から大陸の文化や技術をどんどん受け入れて独自の日本文化を形成し発展してきました。
 時代遅れを指す「ガラパゴス化」という言葉もあります。ガラパゴス諸島は、南米大陸エクアドルから西へ九百キロほどにある隔離されたところです。そこには大陸には見られない独自性の種がおり、ダーウィンの進化論のヒントとなり、世界遺産にも登録されています。
 たしかに閉鎖性は排他的というマイナス面がありますが、独自の種や文化を生みだす環境をつくるプラス面もあります。
 江戸時代は外国との交流はほとんどなく、幕府の強権のもとで閉鎖的な時代でありました。しかし、武士道、禅、浮世絵や歌舞伎など日本独自の文化が形成されました。特に美術分野では西洋世界にも大きな影響を及ぼし、現代のアニメにも引き継がれているといいます。
 こう考えると日本人のマイナス面を改めつつ、プラス面である日本文化の価値を見直し、活かしていくことが大事なのではないでしょうか。

 

「誠実」は日本ブランド
 戦後、日本の十八番であった家電産業は今では覇権争いで劣勢を強いられていますが、電子部品、精密機械、環境技術、町工場の匠の技は高い専門性で世界において存在感を示しています。また、日本を訪れる外国人は日本人のおもてなしの心を高く評価して、日本ファンが増えています。
 信頼できる製品・技術・サービスは、なにごとにも誠実で真心をこめる人間によって生みだされます。それは容易に真似ができない暗黙知であり、根底にあるのは日本人の精神性や気質にほかなりません。つまり、日本人の心に対する信頼感が「ジャパン・ブランド」になっているのです。
 今、経済規模で日本を追い越した中国で日本的経営が脚光を浴びていますが、その理由は金儲けの先にある何かを求めているからです。日本人独自の精神性を活かした高い品格ある経営こそ、世界の手本となる日本の財産なのではないでしょうか。
 最後に、内村鑑三の言葉をご紹介しましょう。彼はクリスチャンで理想社会を求めアメリカに渡米しましたが、苦難に満ちた生活を送り、日本の良さを再認識しました。 彼は日本に戻り、軽井沢・星野温泉の当時の若主人に「成功の秘訣」と題し、こんな言葉を送っています。
一.自己に頼るべし、他人に頼るべからず。
一.本を固うすべし、しからば事業は自ずから発展すべし。
一.急ぐべからず、自動車のごときもなるべく徐行すべし。
一.成功本位の米国主義に倣うべからず、誠実本位の日本主義に則るべし。
一.濫費は罪悪と知るべし。
一.よく天の命に聴いて行うべし。自ら己が運命を作らんと欲すべからず。
一.雇人は兄弟と思うべし、客人は家族として扱うべし。
一.誠実によりて得たる信用は最大の財産なりと知るべし。
一.清潔、整頓、堅実を主とすべし。
一.人もし全世界を得るともその霊魂失わば何のためあらんや。人生の目的は金銭を得るにあらず。品性を完成するにあり。  

 

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■愚直経営のススメ 全8タイトル
第1回 大智は愚の如し
 
第2回 人間の尊厳を守る 
第3回 愚直経営者の人間的魅力 
第4回 日本ブランドの経営 
第5回 持ち味を研く
 
第6回 閾値超えの戦略
 
第7回 不のエネルギーを活かす
 
第8回 いい人生の物語をつくる

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