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アイパートナー

愚直な社長の参謀

 

志誌ジャパニストに連載された「愚直経営のススメ」をご紹介いたします。

全8回ございます。ぜひ、ご覧ください。

 

愚直経営のススメ 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回

第5回 持ち味を研く

力の源泉

 二〇二〇年に開催される東京オリンピックに向けていろんな話題が絶えませんが、主役は言うまでもなく世界トップレベルの選手たちです。国を代表して金メダルを目指し凌ぎを削る躍動感あふれる選手たちの姿は、我々に感動を与えずにはおきません。三〇年ほど前はアメリカとソビエト、東ドイツなど共産圏がメダルを二分している観がありましたが、今では群雄割拠の時代になりました。例えば陸上を見るならば、短距離はジャマイカ、長距離はケニアやエチオピアのアフリカ勢が圧倒的に優勢です。
 ウサイン・ボルト選手が「日本に体操や柔道があるように、ジャマイカには陸上がある」とコメントするように、それぞれの民族の持ち味を活かした競技で世界を獲り、自信をつけて国民の士気を高め、国を豊かにしていきたいという思いがあります。
 日本国内でも、地方の町おこしや今話題のふるさと納税では、その土地ならではの名産品をPRして地域を活性化しようとしています。私の故郷の兵庫県多可町には、酒米の最高峰「山田錦」誕生の地であることや、奈良時代に生産が始まり鎌倉幕府の公用紙となり、現在では「宮中歌会始」で使われている和紙「杉原紙」などがあります。最近はTVや雑誌などで取り上げられ、故郷の良さが広く知られることは嬉しいことであり、誇りでもあります。
 また、会社経営においても、会社がもつ持ち味を活かした商品やサービスは、魅力的で持続的な競争優位性につながります。

 

持ち味とは

 持ち味とは、誰にでも生まれながらに備わっているもので、十人十色です。ある人の性格や思考・行動特性の中で、何か特徴的であったり、しぶとかったりする部分。強みや良さと言うより、長短表裏一体となったものであり、「良い方向に発揮される可能性がある個性」ではないでしょうか。 
 野球なら、俊足を活かして盗塁を成功させた選手を指して「持ち味」を活かしたと褒めます。大柄のホームランバッターもいれば、小柄で送りバンドの得意な選手もいる。本格派の剛腕投手もいれば、打たせて〝取る〟知能派投手もいて、いろんな組み立てがあるからこそ面白いのです。
 日本料理には、素材の持つ本来の味、香り、色、食感、そして四季おりおりの旬の食材を活かす、そしてヘルシーであるという持ち味があり、世界各地でファンが増えてきました。
 大切なことは、一人ひとりが自分や組織の持ち味を知り、発揮したなら、成長可能性とチャンスはもっと拡がるということです。自分らしくイキイキ働いて、他にない独自性を発揮できます。そして、社会が必要とする輝く人や組織になれます。
 氷山モデル図は、持ち味の発揮プロセスを概念化したものです。水面下や内面にある持ち味は行動によって顕在化していくものです。単独で発揮される場合もあれば、他の持ち味と結びついて発揮される場合もあります。持ち味を活かすには、持ち味を自覚し、繰り返し研ぎ澄まし発揮することで経験値を高め、自分らしさ(特徴、強み)を育んでいくことが大切です。
 しかし、今の日本の企業の大半は、戦後の成功モデルである金太郎的社員を求める思考パターンから抜け出せていません。社員の評価制度は学校と同様に百点満点にいかに近づけるかを競う方法に止まっています。持ち味を発揮したかどうかより、何ごとも平均的に点を取る者が良い評価を受けるようなシステムであり、突出した持ち味を切り捨てていると言わざるをえません。

 

経営者の持ち味を発揮する

 経営においては、経営者の価値観や性格、思考や行動特性で企業文化が形成され、独自性や優位性が作られます。ここで拙著『愚直経営で勝つ!』(PHP研究所)に登場いただいた経営者の価値観をご紹介しましょう。「仕事とは、一生かけて命をかけて心底熱中する遊び」(好奇心を持って仕事を探求する)「濡れ雑巾経営で自由の最大化を実現する」(出る杭を伸ばし創造性で勝負する)「人に尽くせることが真の幸せ」(人格を磨き、長期的な信頼関係を育む)「何があっても正しさを実践する」(不正や邪なことをせず、枕を高くして寝る)「多樂スパイラルで生きる」(すべての判断基準は楽しいかどうか)「Good People Company(人間の尊厳、美点を見つめる)「万人万物共存共生」(宇宙・地球と共に生きる)など、多種多様です。
 経営者にはそれぞれの哲学や世界観があり、いずれも魅力的で優劣などつけようがありません。それが企業活動の持ち味として表れ、それぞれがオンリーワンなのです。
 明確な軸があってブレない。途中で投げ出したり逃げたりしない、一貫性があって信頼性が高い。手間を惜しまずコツコツとプロセスに手抜きがない。これは、持ち味を発揮するからこそできるのです。

 

自己表現する喜び

 四書五経の一つ中庸には、「天の命ずるこれ性と謂い、性に率うこれ道と謂い、道を修むるこれ教えと謂う」の一節があります。その意味は、人にはそれぞれ持って生まれた天性や持ち味があり、それを活かしていくことが人としての正しい生き方である。正しい生き方を極めるために常に持ち味を研ぎ澄ましていかなければならない。また、論語には「朝に道を聞かば、夕に死すとも可なり」とあり、朝にどう生きるべきかを悟ることができれば、夕方に死んだとしても後悔はない。つまり、一生かけて生き方を極めていくということが人生の目的であると説いています。
 経営者や管理職は持ち味を活かしたリーダーシップを発揮し、社員もそれぞれ持ち味をそれぞれの業務に活かす。自分なりの工夫を凝らし、自己表現することは人間の大きな幸せでもあり、人間の尊厳を守ることにもなります。
 これからの時代は、価値観や性格に合った仕事に就き、得意な技能を活かし仕事に没頭する。自分の持ち味が発揮できる土俵で勝負するなら、優越感と自信が持てて、良い結果が得られるでしょう。壁にぶつかっても、苦労に耐えられるでしょう。一生かけて、自分の世界観を表現する働き方、加えて、人の持ち味を活かす組織のあり方を追求していくことが我々の使命なのではないでしょうか。

 

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■愚直経営のススメ 全8タイトル
第1回 大智は愚の如し
 
第2回 人間の尊厳を守る 
第3回 愚直経営者の人間的魅力 
第4回 日本ブランドの経営 
第5回 持ち味を研く
 
第6回 閾値超えの戦略
 
第7回 不のエネルギーを活かす
 
第8回 いい人生の物語をつくる

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